秋が終わって夏が来た。

、、、かのような陽気が続いている。十月も下旬だが、庭では蝶や蛾がふつうにちらほら飛んでいる。
「あなた、きのうも飛んでたよね?」
みたいな感じで。

「蝶も蛾もフランス語では同じようにパピヨンっていうんだよ。」と教えてもらったのは、こどものころ、映画「パピヨン」を家族とテレビで見ている時だった。
スティーブ・マックイーンとダスティン・ホフマンが出演する脱獄囚を描いた物語で、主人公は胸に蝶の刺青をしていてパピヨンと呼ばれていた。

わたしは蛾がものすごく苦手なので、この時かなりの衝撃を受けた。蝶と蛾はまったく違うものにしか思えなかったので。

その後、成長して知識が増えるにつれ、世の中には蛾を美しいものとして、ものすごく憧れている人たちがいることを知り、とても驚いた。特に、翅についた模様が表現できないほど魅力的らしく、そんな風に思うなんて、ただただ世界は広いんだな、と、若いわたしはおそれたのだった。

だから中学の国語の教科書で、ヘッセの「少年の日の思い出」を読んだ時も、『あ、またこれなんだな。』と蛾に対する美意識の存在に気を取られて、内容に違和感を覚えるところがあったのだが、それほど気にすることもなく、そして、忘れた。とにかくあの巨大な蛾の姿が頭に浮かんできて、圧倒されたのである。

それから半世紀近くがたったつい先日、芥川賞作家の又吉さんがやっているYouTubeチャンネル「渦」でこの小説を取り上げていて、それについて語っていたのがとても面白かった。

又吉さん、ありがとう。